睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?「ただのいびき」と何が違う?
結論:いびきに「呼吸の停止」と「日中の強い眠気」が加わると、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸の低下(低呼吸)が1時間あたり5回以上繰り返される病気です。国内の潜在患者数は中等症以上で推定940万人とされていますが、実際にCPAP治療を受けている方は約65万人にとどまり、9割以上が未診断・未治療のままです。
単純いびき症との最大の違いは、呼吸が止まることで血中酸素濃度が低下し、心臓や脳に負担がかかる点にあります。本人は「寝ている」つもりでも、脳は一晩中、酸素不足のアラームを受け続けています。参考文献1:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020。日本呼吸器学会/厚生労働科学研究班、2020年。ホバーまたはフォーカスで書誌情報を表示し、クリックで参考文献リストへ移動します。[1]
出典:Benjafield AV et al. Lancet Respir Med, 2019; 7(8):687-698(世界的疫学調査)
SASを放置すると心血管系や日中の眠気にどのような影響がある?
結論:未治療の重症SASは、心筋梗塞・脳卒中などを含む心血管イベントのリスク上昇と関連します。
呼吸が止まるたびに血中の酸素濃度が急激に低下し、脳は「危険だ」と判断して覚醒反応を起こします。このサイクルが一晩に数十回から数百回も繰り返されることで、心臓・血管に慢性的な負担がかかります。
未治療の重症SASで報告されたリスク(男性の観察研究)
Marinらの研究は、男性の未治療重症SAS患者で、心筋梗塞・脳卒中などを含む致死的・非致死的な複合心血管イベントの増加を報告しています。参考文献4:Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with CPAP。The Lancet(Marin JM, et al.)、2005年。ホバーまたはフォーカスで書誌情報を表示し、クリックで参考文献リストへ移動します。[4] 高血圧、心筋梗塞、脳卒中の個別リスクを同じ倍率で示す研究ではありません。また、未治療のSAS患者の交通事故率は健常者の約2.4〜7倍と報告されています。参考文献5:Obstructive Sleep Apnea and Risk of Motor Vehicle Crash: Systematic Review and Meta-Analysis。Journal of Clinical Sleep Medicine(Tregear S, et al.)、2009年。ホバーまたはフォーカスで書誌情報を表示し、クリックで参考文献リストへ移動します。[5] 日中の眠気による居眠り運転は、本人だけでなく周囲の命にも関わる深刻な問題です。
出典:Marin JM et al. Lancet, 2005; 365:1046-53(男性の観察研究、心筋梗塞・脳卒中等を含む複合心血管イベント)/Young T et al. Sleep, 1997;国土交通省自動車交通局啓発資料
どんな人がSASになりやすい?女性もなる?
結論:中年以降の男性に多いですが、女性も閉経後にリスクが上昇します。肥満・顎が小さい・首が太い方は要注意です。
SASのリスク因子には以下のものがあります:
- 肥満(BMI 25以上):気道周囲の脂肪が増え、気道が狭くなる
- 男性:女性の2〜3倍の発症率(ただし閉経後は差が縮小)
- 加齢(40歳以上):筋力低下で気道が塌れやすくなる
- 顎が小さい・首が太い:骨格的に気道が狭い
- 飲酒・喫煙習慣:気道の筋弛緩・炎症を促進
女性は「いびきをかかない」と思われがちですが、閉経後はホルモンバランスの変化により発症リスクが上昇します。女性のSASは見逃されやすいため、日中の眠気や倦怠感がある場合は積極的に検査を受けることをお勧めします。
いびき・睡眠外来は何科に行けばいい?

結論:呼吸器内科が最も適しています。SASは「気道が狭くなる」ことが原因の呼吸器疾患であり、呼吸器内科が診断・CPAP治療の中心を担います。
耳鼻咽喉科は鼻やのどの構造的な問題(アレルギー性鼻炎、扁桃肥大など)の診断・手術治療が得意です。一方、呼吸器内科はSASの診断、CPAP療法の導入・管理、そして高血圧や糖尿病などの生活習慣病を含めた全身管理を得意としています。
CPAP治療は月1回の定期通院が必要なため、長期にわたって無理なく通い続けられるクリニックを選ぶことが治療成功のポイントです。
検査は入院不要?自宅・外来でできる?費用はいくら?

結論:まずは自宅でできる簡易検査(3割負担で約3,000円)から始め、必要に応じて機器を郵送する自宅精密PSG検査を行います。
簡易検査(アプノモニター)は、小さなセンサーを指と鼻に装着して、いつも通りに自宅で眠るだけです。簡易検査だけでは判断が難しい場合や、より詳しい睡眠の評価が必要な場合には、機器をご自宅へ郵送する精密PSG検査をご案内します。参考文献2:Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea。American Academy of Sleep Medicine(Kapur VK, et al.)、2017年。ホバーまたはフォーカスで書誌情報を表示し、クリックで参考文献リストへ移動します。[2]
| 検査の種類 | 場所 | 費用(3割負担) |
|---|---|---|
| 簡易検査(アプノモニター) | 自宅 | 約2,700〜3,000円 |
| 精密検査(PSG) | 自宅(機器を郵送) | 6,850円(再診料込み・3割負担) |
自宅精密PSG検査は、健康保険3割負担で再診料込み6,850円が目安です。初診時の費用や追加検査が必要な場合は別途費用がかかることがあります。
HOME PSG TIMELINE
自宅精密PSG検査の流れ
精密PSG検査は、機器がご自宅に到着後、装着して眠り、郵送で返送いただく検査です。検査機器の受取・返送のために来院する必要はありません。
STEP 01
事前診察
症状、既往歴、簡易検査の結果などを確認し、精密PSG検査が必要かを医師が判断します。
STEP 02
検査機器がご自宅に到着
検査日までに、装着方法のご案内とともに検査機器をご自宅へお届けします。
STEP 03
ご自宅で装着・就寝
ご案内に沿ってセンサーを装着し、いつも通り就寝します。脳波・呼吸・酸素濃度などを記録します。
STEP 04
睡眠中の状態を記録
睡眠中の呼吸、酸素濃度、脳波、体の動きなどを記録し、睡眠の状態を詳しく調べます。
STEP 05
機器を郵送で返送
記録終了後に機器を外し、到着したご案内に沿って郵送でご返送いただきます。
STEP 06
後日、結果をご説明
結果をもとに、経過観察、CPAP治療、生活習慣の見直しなど、今後の方針を一緒に検討します。
ご病状や検査の内容により、当日のご案内が一部異なる場合があります。詳細は診察時または予約時にご確認ください。
自宅精密PSG検査について相談したい方へ
いびき・無呼吸・日中の眠気が気になる方は、まず診察で検査の必要性をご相談ください。
CPAP治療とは?苦しくない?一生使い続ける必要がある?

結論:最初は違和感がありますが、多くの方が1〜2週間で慣れます。減量に成功すれば卒業できる方もいます。
CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)は、鼻や口にマスクを装着し、機械から送られる空気の圧力で気道を開いた状態に保つ治療法です。中等症〜重症のSASに対する世界標準の治療法であり、使用初日から「朝のスッキリ感が違う」と実感される方も多くいらっしゃいます。参考文献3:Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea with Positive Airway Pressure。American Academy of Sleep Medicine(Patil SP, et al.)、2019年。ホバーまたはフォーカスで書誌情報を表示し、クリックで参考文献リストへ移動します。[3]
当院では、マスクのフィッティングを丁寧に行い、空気圧も患者さんの状態に合わせて細かく設定します。1ヶ月後には「つけないと眠れない」とおっしゃる方がほとんどです。
2026年6月から、CPAPの保険適用基準はどう変わった?
結論:2026年6月の改定で、CPAPの保険適用に関わる検査上の基準が緩和されました。以前「対象外」と言われた方も、検査方法・結果によっては対象になる可能性があります。
| 項目 | 改定前(〜2026年5月) | 改定後(2026年6月〜) |
|---|---|---|
| 簡易検査による基準 | AHI 40以上 | AHI 30以上 |
| 精密検査(PSG)による基準 | AHI 20以上 | AHI 15以上 |
たとえば精密検査でAHI 15〜19だった方、または簡易検査でAHI 30〜39だった方は、2026年6月の改定により新たにCPAPの保険適用対象になった可能性があります。過去の検査結果をお持ちの方は、適用可否を医師にご相談ください。
出典:令和8年度診療報酬改定(厚生労働省)
CPAP治療は毎月いくらかかる?医療費控除は使える?
結論:保険適用(3割負担)で月額約4,000〜5,000円です。1日あたり約130〜170円。医療費控除の対象にもなります。
| 費用項目 | 3割負担 | 1割負担 |
|---|---|---|
| CPAP機器レンタル+診察料 | 約4,000〜5,000円/月 | 約1,500〜1,700円/月 |
| 年間合計 | 約48,000〜60,000円 | 約18,000〜20,400円 |
年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告で医療費控除を受けることができます。CPAP治療費に加え、ご家族の医療費や通院交通費と合算可能です。
このページの執筆・監修者
森川 髙司(もりかわ たかし)
医療法人煌仁会 理事長・森川内科クリニック 院長
平成4年(1992年)3月に奈良県立医科大学を卒業し、平成5年(1993年)5月17日に医師免許を取得しました。同大学付属病院(第2内科)で臨床研修を行い、内科医として呼吸器・感染症を含む幅広い診療経験を積んできました。2016年に森川内科クリニックを開院し、2019年に医療法人煌仁会を設立しています。
主な資格・研修:内科専門医、日本医師会認定産業医、温泉療法医、かかりつけ医認知症対応力向上研修修了。所属団体として、日本喘息学会、日本医師会、兵庫県医師会、尼崎市医師会などが公式ページに掲載されています。
確認済みの指定医・認定医:難病指定医、公害指定医、被爆者一般疾病医、高濃度ビタミンC点滴療法認定医。
いびきや日中の眠気が気になる方へ、検査から治療の選択肢までを分かりやすく解説します。
- 最終更新日
- 医療監修日
監修の根拠・参考文献
本記事は、以下の診療ガイドライン・査読文献・公的機関または事業者の公式案内を参考に、医師が内容を確認しています。
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当院は呼吸器内科を専門としており、SASの検査からCPAP治療の導入・管理、さらには高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理まで、ワンストップで対応いたします。
「たかがいびき」と放置せず、まずはお気軽にご相談ください。ご家族の同伴での受診も歓迎しています。
